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[残響のテロル]もう1人のテロリスト

第7章 # 4 BREAK THROUGH




「深入りはしない。お前が言ったんだぞ」


お風呂から出て、ドアに手を伸ばした時、ナインの声が聞こえ、手を引っ込めた。


「分かってるよ。深入りはしないって。でもさ…」
「何だ?」
「家出、したみたいなんだよね。もし補導とかされて俺らのこと話されたりしたら、困るじゃん」
「それで?」
「だからさ…。ちゃんと見張ってた方がいいと思うんだよね」
「…クイーンは、見捨てるべきだったな」


ツエルブの、ソレが深入りなんじゃないか。


「…馬鹿じゃないの…」


誰にも聞こえないほど、小さく、でも、そこに込めた感情は大きかった。


濡れたタオルを握りしめ、次の手を考える。

家出をしたリサちゃん
こんな時間に出ていたら確実に補導対象になる。
ナンバーを変えたバイク。
少しずつ、確実にズレていくナインとツエルブの気持ち。

"見張ってた方がいいと思う"
"クイーンは見捨てるべきだった"
その言葉の裏には、何が隠れてる?

「ッ…、」

耳鳴り。
頭痛。
吐き気。

トイレへ、逃げるように駆け込む。

「ゴホッ、ゴホッ、っはぁ、はぁ…っ…」

ただ少し、咳き込むだけで何も出てこない。

床に座り込み、項垂れる。

狭いトイレに1人。
私の呼吸しか聞こえない。
まるで、世界にひとりぼっちになってしまったかのように錯覚する。


「名前?」
「ナイン…」
「大丈夫か?開けるぞ」


キィ、と音を立ててゆっくりとドアが開く。


「話、聞いてただろ」


私の後ろにナインがしゃがみ込む。
バレてたみたいだ。


「たまたまだから…ごめん」
「そんなことわかってる。…やっぱり、お前の言う通りだよ。ツエルブが行った」
「うわ、馬鹿だねぇアイツも…」


振り向いてナインに笑顔を見せる。



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