第7章 # 4 BREAK THROUGH
ゾクリ…と背中を冷や汗が流れる。
冷たく、俺を見ている。
いつもの柔和な表情からは想像もできないほど、冷たい表情をした名前がいる。
1番優しい名前が、実は1番恐ろしいんだ。
「ねぇ、ナイン」
名前は立ち上がり、俺の目の前に立ち、ニッコリと笑顔を貼り付けている。
「深入り…しちゃうと痛い思いをするのはダレ?」
笑顔を消し去り、代わりにまた、冷たい目を向けている。
頬に手が伸び、体が震えた。
「怯えないでよ。ねぇ、辛いのはさ…裏切られた瞬間なのかな、それとも」
_____裏切られるまでの、永遠にも感じる時間なのかな?
コイツは今、ツエルブが裏切ってしまうことを前提に話している。
「おい名前…」
「だって…!」
「!」
名前は涙を流していた。
「嫌だよ…私だって…2人がいなくなるのも、2人が離れちゃうことも…!」
ずっと3人で生きてきたのに、ずっと3人一緒に居たいのに、いつか2人が離れ離れになっちゃう気がして…
と彼女は言った。
俺の服に手を伸ばし、縋り付いて泣いている。
「名前…」
「2人が私から離れることより…、私からしたら、2人が離れ離れになることの方が辛いんだよ…」
辛いのはこいつも同じハズなのに、俺たち2人の心配をしている。
「ただいまー」
少し遠くから、ツエルブの声が聞こえた。
「!わ、私…お風呂入ってくる。…ごめんね」
服から手を離し、風呂場へと足早に去って行く名前。
「ナイン…ちょっと2人で話そう」
「あぁ。ツエルブ」
きっと、名前の言うことは当たってるよ。
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