第7章 # 4 BREAK THROUGH
意味がわからない、というような顔をしたナインに笑いかけ、問題を続ける。
「道端のダンボールの中に猫がいます。その猫は綺麗な毛並み、自分によく似た目をしています。その猫が一声鳴きました。それはまるで、"この世界から連れ出して。ダンボールから出して。"と言っているようでした。さて、君はその猫をどうする?」
テーブルに肘をついてナインに視線を向ける。
一瞬、困惑した表情を浮かべた。
「じゃあ、選択肢をあげようか」
人差し指を立て、私は言う。
「1、猫をダンボールから出して抱きかかえる。2、そのままにしておく。3、飼ってくれそうな人を探す。どれ?」
2、3、と指を増やし、顔の前で揺らしてみせる。
それでもナインは黙ったままだ。
「…当ててあげるよ。ナインの選択したものは1。…拾っちゃうんだよ。優しいナインの事だから。それに、私たちには頼れる大人なんていないんだもん…だからといって、置き去りになんかできない」
「それが、何の関係があるんだ」
わかっているくせに認めないんだ。
察しがよくて、頭のいいナインだから。
いつもみたいな涼しい顔をして、必死に戦ってる。
たまに私に向ける、縋るような目。
でも敢えて、イジワルをする。
「猫はリサちゃん。選択するのはツエルブ。ツエルブにも、3つの選択肢があって、ツエルブは1を選んでしまう。後から自分が痛い目を見るとしても…」
______そしてそれを、ナインは受け入れてしまう。
ナインも痛い目を見る事は初めからわかっていたハズなのに。
「デショ?」
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