第5章 # 3 SEARCH & DESTROY
屋上に着くと、ナインが耳を押さえていた。
「ナイン、大丈夫⁉︎」
「また耳鳴り?」
「いや、何でもないよ」
また、ということは、これまでにも何回かあったのだろうか。
何かあっても強がるナインは変わらず…。
「嘘は無しだからね」
「だったらこっちも嘘は無しだ。三島リサに会ってただろ?」
「へへ。バレてた?分かってるさ。深入りはしない。深入りしたら…後で痛くなっちゃうから」
青い空を見上げながら言うツエルブは、どこか寂し気に微笑んだ。
でもきっと、ツエルブは深入りをする。
痛くなるのは、きっとナインもじゃない?
そんなこと言えないけど…。
気づかれないように、小さく溜息をつく。
「ナイン、暑いからあげる」
「あぁ、ありがとう」
三島リサ…か。
「戻ろうか」
ナインのひとことで、屋上を後にする。
「ん?」
『聞こえるか?スピンクス一号二号三号。警視庁の柴崎だ』
「おっ、何?」
『お前たちの謎掛けに答えてやろう』
「へぇ、これが柴崎さん…かっこいいね。えっ、ちょっと睨まないでよ」
「睨んでない」
「ごめんごめん!」
睨んでるよ、ナイン。
『一説にはオイディプスは生涯足を引きずっていたといわれる。
足を引きずる竜アラハバキだ』
そうしてる内にも、柴崎さんの解答は続く。
全て正確に。きっと彼は、わかったのだ。
「間違いなく警察は…俺たちとプルトニウム強奪犯を結び付けた」
半年前の青森の事だ。
「なんだ、私がいるから混乱すると思ってたのになー」
「お前もしかして…」
「名前⁉︎」
「言ったじゃん。何でもするよ?囮でも、なんでも」
2人に笑みを向ける。
_______2人に捨てられたくないよ。
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