第8章 三月ウサギ・エリオット=マーチ
*帽子屋屋敷・ブラッドの部屋*
――コンコン
「……誰だ」
「私よ、アリス。ブラッド、今いいかしら?」
重いドアがキィと開き、いつものように気怠げなブラッドが出てくる
「どうしたんだ、お嬢さん。いきなり尋ねてくるなんて珍しいじゃないか」
「スコーンを作ったの。良かったら一緒に食べない?」
そう言って、持っていたバスケットを掲げる
しばし考え込んだブラッドはニヤリと笑った
「せっかくのお茶会のお誘いだ。この私が、お嬢さんからの誘いを断る訳がないだろう」
「本当!良かった!」
「…ということだエリオット。お前も一緒に今からお茶会だ」
後ろのソファーに声をかけたブラッド
そこには書類とにらめっこしていたエリオットがいた
「へ?いいのかよ、この書類」
「そのくらい、お前にあと少し時間をやれば簡単に片付けられるような簡単なものだ。今じゃなくてもこちらに害はない。それに、せっかくお嬢さんが菓子を焼いて持ってきてくれたんだ。ありがたく頂こうではないか」
――パチン
彼が指を鳴らすと、どこからともなくメイドが現れてお茶会の準備を始める
「ごめんなさい、急に来ちゃって…」
「構わないよ。それに私も紅茶が飲みたいと思っていたところだったからな」
「アリス…、アンタ、菓子も作れるんだな!スゲェ!!」
あっという間にセッティングされたティーセットを囲み、アリスはバスケットの蓋を開けた