第8章 三月ウサギ・エリオット=マーチ
*帽子屋屋敷・厨房*
「…全く、学習して欲しいものだわ」
ぶつぶつと文句を言いながら少々乱暴に生地を混ぜるアリス
あの後…
結局、壁に穴を開けたり部屋のドアを壊されたりしたので、さすがのブラッドも無視出来なかったのか何処からか現れると、そのまま三人を連れ去って行った
その後は、双子はいつもよりは真面目に門番の仕事をしていたし、エリオットはブラッドの部屋で苦手な書類整理をしている
いい気味だと思ったが…
「…でも、エリオットは私を助けてくれたのよね。…あの斧から」
首もとで鋭く光っていた双子たちの斧
ギラギラ光るアブナイ玩具集めが趣味な双子たちが大好きな武器
(…今日こそ本当に死ぬかと思ったわ…)
ふと、手元の生地を見る
気晴らしに、久しぶりにお菓子でも作ろうかと厨房を借りたアリス
その作業を一旦止めて、巨大な冷蔵庫へと行き野菜室を漁る
「…今日だけだからね」
その手には、オレンジ色のにんじんが握られていた