第1章 ハートの騎士・エース
「…エース…」
熱っぽい顔で彼の顔を見つめると、ごくりと喉が動いたのが見えた気がした
「…ごめんなさい、迷惑かけて」
「大丈夫だ。もとはといえば、俺の不幸体質が原因だから」
そう言って、優しく頭を撫でてくれる
(…気持ちいい…)
「ごめんな、アリス」
微かに聞こえた彼の声音は、いつもの軽さはなくて…
「エース…?」
「……」
初めて見る彼の真剣な顔
「…不思議だ」
彼は自分の胸に手を当てて言う
「俺らには君みたいに心臓がない。…はずなのに、今、ドキドキしてる気がするんだ」
「……!!」
この世界の人は心臓はない
代わりに時計が本来心臓があるべき場所で動いている
一定のリズムを刻んで
ドキドキするはずなんかないのに、彼はドキドキしてる気がすると言っている
「どうしてだろうな」
はははっと笑うエースの表情は少し困ったようだった
「…私も」
「…え?」
「私もドキドキしているわ…」