第1章 ハートの騎士・エース
「………ッ…」
(暖かい…。ここは、天国…?私は…)
「…、…ス、アリス!」
ゆっくりと瞼を開くと、心配そうに見つめるエースの瞳と視線がぶつかった
「…良かった、気がついた」
「エース…?私、助かったのね…」
パチパチと焚き火が辺りを暖かく照らしている
時間帯が夜に変わったようだ
「まだ起き上がらない方がいい。体力が回復するまでは、横になっていなきゃ」
「…そうね、そうするわ」
ふと見ると、エースはいつもの赤い(目に悪い)コートを着ていなかった
「まだ濡れてるけど、寒くないか?うーん、もう少し火力を強めるか…」
それはアリスにかけられていた。ふわりとエースの香りが漂ってきたような気がして、急に気恥ずかしくなる
(何を恥ずかしがっているのよ…。これじゃあまるで、エースのことが…)
「……ぇ…!!」
「ん?どうしたんだ、アリス?顔赤くないか?…もしかして、熱…?」
(…まさか、本当に…)
すとん、とはまる
こんなに振り回されるのに、最初は渋々だったのに、なぜか一緒にいてしまう
「ちょっとごめんよ?」
エースが顔をゆっくり近付ける
反射的にアリスは目を閉じた
「……」
こつん
「少し熱いな…。熱があるみたいだ…」
(熱…。そうかも…。熱のせいだわ…)