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〜時計仕掛けの夢〜

第7章 帽子屋・ブラッド=デュプレ



「…私は、君が思っている以上に本気で君を気に入っているんだ…。…言いなさい」

有無を言わせないブラッドの目つきは、さすがマフィアといったところだ

はぁ…、と溜め息をつき観念したアリスは重い口を開いた

「…あなたが、元いた世界にいた人によく似ていたから、少し思い出していただけよ。気分を悪くさせたのなら、謝るわ」

「元いた世界にいた私によく似た男…、か。それは実に、面白くないな」

(言うと思ったわ)

「だから言わなかったのに」

音もなく立ち上がったブラッドは、アリスの後ろに来ると彼女の細い肩に腕を回し、ゆっくりと抱き締めた

「ブラッド!?」

「…君は、そいつのことが好きだったんだろう?今までも…、私を見つめていた君の目は、恋をしていた目だった」

「…そうよ、好きだったわ。でももう過去のことよ」

アリスはまだ少し湯気が上る紅茶に視線を落とす

その綺麗な朱色の液体には僅かに頬を染めたアリスと、彼女を後ろから抱き締めるブラッドが映り込んでゆらゆらと揺れていた

「それが過去のことだろうと何だろうと、少なからず君は未練があるんだろう?…私を目の前にして他の男の…、しかもここにはいない元の世界の男のことを考えているとは…。そいつを消したくても消せないのが腹立たしい…」
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