第7章 帽子屋・ブラッド=デュプレ
ブラッドは、元の世界のある人と瓜二つなのだ
アリスの家庭教師をしていた、彼女の元彼に
アリスは一途に彼を想っていた
理想の可愛い女の子になろうと一生懸命だった
でも、彼はそうじゃなかった
アリスに、彼女の姉…ロリーナを重ねていたのだ
彼の本命はアリスではなく、ロリーナだった
それが分かって、アリスは彼と別れた
(…でも、ブラッドは姉さんを知らないから『私』を見てくれているのよね…。ブラッドだけじゃない。この世界の人はみんな…)
「お嬢さん、どうしたのかな?」
「……あ…」
いつの間にか自分の世界に入ってしまっていた
アリスの目の前には、元彼…ではなくブラッドが座っている
「何でもないわ、ごめんなさい」
「君が物思いにふけるなんて珍しいじゃないか。何か悩み事か…?」
心配しているかのような声色だが、ブラッドの表情は酷く楽しげだ
彼は面白くないことを嫌う
聞いてくるということは…
「…あなた、楽しんでいるわね?」
「そんなことはない。私はただ、余所者のお嬢さんの悩み事を解決してあげたいと、純粋に思っているんだよ」
(…嘘臭い)