第1章 ハートの騎士・エース
ひゅるひゅる…
「ぎゃあぎゃあぎゃあ!!」
「もっと女の子らしい叫び声を上げてくれよ…」
呆れたようなエースの声など耳にも入って来ない
幸い、彼女の体はエースに抱えられているため多少の安心感はあるのだが、
(死ぬ死ぬ死ぬッ!!)
「大丈夫だよ、アリス」
「ちっとも大丈夫じゃないわよ!!死ぬッ!!」
「大丈夫さ!ただ、少し息を止めてくれよ?」
ひゅるひゅると落ちていく先は…
(…湖?)
眼下に広がるは沢山の水を湛えた湖だ
「ちゃんと捕まって!」
「言われなくても!」
ぎゅっと抱きつくと、エースもぎゅうっと抱きしめてくれる
アリスには見えなかったが、エースの表情はとても柔らかかった
「息止めて!!」
エースの声が聞こえた瞬間…
ザバアァ…!!
(水の音…。私助かったの…?それとも…)
ごぼっ…
彼女の口から空気が漏れる
「アリス!」
エースの声が聞こえた気がした