第1章 ハートの騎士・エース
「何で全速力で走るハメに…ッ」
「何でって…。そりゃあ、走って逃げなきゃ今頃あの熊の腹の中だぜ?」
「分かってるわよ!!」
ぜえぜえと喘ぎながら何とか足を動かす
ちらりと後ろを見ると、物凄い形相でこちらを睨む熊…
…逃げなきゃ死ぬ
(まさかまさか、熊に食べられて死ぬなんて…!!そんなのごめんよ!!)
エースに手を引かれ(引っ張られ)走って(半ば引きずられて)いるため、熊との距離はある
だが、エースの化け物じみた体力に比べれば彼女の体力など小動物に近い
「え、エース…ぜえ、もう、無理…!!」
「えぇ!!もう?…仕方ないなぁ…騎士らしくお姫様抱っこでもしてあげたい所だけど、無理みたいだ」
「どういう…ッ」
「だって、目の前…崖だ」
「……………」
(……ごめんなさい姉さん、私、熊に追いかけられて崖から落ちて死にます…)
アリスの顔が引きつる
緑に覆われた視界が一気に開け、ふわりとした浮遊感
「いくぜ!!」
「どこに…!!…ぎ」
「ぎ?」
「ぎゃあぁああぁぁぁッ!!!」
…落ちた