第2章 時計屋・ユリウス=モンレー
*時計塔・仕事部屋*
「…すまない」
ユリウスの小さな声が空気に溶けた
手当てをしてもらっているアリスの体の震えは止まらない
…時計屋とは、疎まれる役なんだ
いつか聞いたユリウスの言葉を思い出す
彼らの心臓代わりの時計を直すのがユリウスの仕事
一見すると役に立つ仕事だと捉えるが、違う
時計屋…別名「葬儀屋」
直す時計は善人もいれば悪人もいる
直った時計はまた生前の役なしとして蘇る
その時計が壊れない限りずっと、終わりなきゲームの駒としてこの世界で生きるのだ
「…アリス、大丈夫か…?」
「………ッ…」
アリスの視界がぼやけ、彼女の瞳からは大粒の涙が零れた
「お、おい、泣くな!泣くなアリス!…ったく、しょうがない女だ…」
ポロポロと涙を零すアリスをそっと抱き寄せ、優しく背中を撫でてやる
(…ユリウスの匂い…)
機械油の匂いがふわりと漂ってアリスを包んだ
「…お前が死ななくて良かった」
「……え…」
「お前はかけがえのない存在だ…。この世界にとっても、そして、…私にとっても…」