第2章 時計屋・ユリウス=モンレー
「おい、まずいぞ」 「ちゃんと時計屋を狙えよ」
どこからか声が聞こえる
「アリス、大丈夫か!?」
(右腕が痛い…何で…)
「…掠っただけか。良かった…」
ユリウスのほっとした表情に、アリスは現状を把握した
彼女を撃ったのは役なしで、ユリウスを狙ったが的が外れたらしい
「……あ…」
体ががたがたと震える
自分の腕から流れる赤を見た瞬間、アリスは改めて思った
ここは銃弾が飛び交う世界なんだ、と
「…ユリウス、アリスを連れて時計塔まで先に戻っていてくれ」
爽やかさの欠片もないエースの低い声がユリウスを促す
「…ああ。…行くぞ、アリス」
ユリウスに抱きかかえられるようにして、アリスはこの場を去った
「…さてと、いい加減出て来たらどうだ?」
未だに姿を現さない役なしにエースは言う
「…まぁ、場所は分かってるんだけどね」
そう言うと、通りの突き当たりにある空き家へ行き、ドアを開ける
「ひっ…」 「や、止めてくれ…」
腰を抜かしている男たちにエースは冷たく言い放つ
「…君たちのせいで、関係のない彼女が怪我をした。ユリウスに何の恨みがあるのかは知らないけど…せっかくの俺たちの時間が台無しだ…。…覚悟、出来てるよね…?」
返事を待たず、彼は腰に挿した長剣を抜いて銀の刃を閃かせた