第2章 時計屋・ユリウス=モンレー
…ことん
「どうぞ、ユリウス」
「…ん?あぁ、もうそんな時間か」
白い湯気がのぼるカップを傍に置くと、アリスは緊張してじっと待つ
眼鏡を外したユリウスがおもむろにカップを取り、ごくりと一口…
「………」
「……68点」
「そんなぁ!今回は上手くいったと思ったのよ?」
「豆の挽きが甘い。お前、速さなどどうでもいいと適当に挽いたんじゃないだろうな」
「どうでもいいなんて思ってないわよ!ただ、採点が気掛かりで気が漫ろになったというか…」
「………………………はぁ」
「……次はもっと頑張るわ」
今回で何度目かわからない、ユリウスの珈琲の採点
初めはインスタントの珈琲をアリスが出したことから始まった
ユリウスの珈琲へのこだわりは、ブラッドやビバルディの紅茶へのこだわりと同等で、豆の種類からお湯の温度、サイフォンのフィルムの種類など凄まじいこだわりようだ
それを知ってからアリスは、ユリウスが休憩を取る時間帯に合わせて珈琲をいれている
今回は68点…
前回は64点だったので、進歩した方だ