【ONE PIECE】僕に盲目になって【ローorキッド】
第1章 君の光を守りたい二ヶ月間
「…っ、そうじゃねェ…そうだ、何でおれが今夜此処に泊まらなきゃならねェ」
すっかり流してしまいそうだった提案に疑問をぶつける。
理由ならわかっていた。
寝ないでキラーからの連絡を待ち宿へ戻るより、一晩此処に身を潜めることを決めて明日また様子を見た方がいい。この状況におかれていれば馬鹿でもその思考に至るだろう。
それでも、おれは悪党だ。
海賊で、強盗で、人殺しの男。
見ず知らずの男というだけで、普通の女は簡単に家に上げたりはしない。
今回はたまたまが重なった結果にしろ、そういう常識すらこいつには無いというのか。
「その方が安全ですよ。このまま待機するのも時間が勿体無いですし」
「クルー達は、酒屋で飲み明かすつもりだろう。おれも其処へ行く」
「だ、駄目ですよ…キッドさんは只でさえ目立つんですから!身体も大きくて、髪も真っ赤で洋服も派手で、格好良いし、とにかく凄く素敵な男性です」
「……何言ってンだテメェは…」
「其処へ行くまでも此処からだと距離が有るんだし…外に出なくて良いなら、出ない方が良いに決まってるってことですよ!」
途中、少し脱線したように思えた○○の言い分は最もで。というより、そのままのことを改めて口にされたようなものだった。
「……襲っちまっても文句言うなよ」
「そ、それは…ちょっと…」
「…世話になる」
「…はい!あ、もし明日になっても落ち着かなかったら、いつまででも家には居ていただいて構いませんからね」
おれはこのとき思った。
こいつが帰ってきて直ぐ、呑気に買い物なんてしている暇は無いと八つ当たりしなくて良かったと。
同時にほんの誤解で強張っていた肩からそっと力が抜けた理由はわからない。
それは、ろくに知りもしない人間へ抱いた淡い期待を、無かったことにしたかっただけかもしれないが。
そして少なくとも、○○はその勝手な思いを裏切らなかった。