第6章 鼓動のSerenade*菅原孝支√
(なんか烏野の皆さんの目がきらきらしていました…)
『王女』だとバレた直後に思ったのはそれだった。
そして案の定、自主練時間に桃の下に訪れたのは烏野の皆だった。
「桃さん!教えてっ!」
「とらせてくれっ!」
予想を裏切らず、日向と西谷が桃を囲む。
その間に入ってきたのは…
「ほら、東山を困らせちゃ駄目だよ。東山だって仕事があるし。」
菅原孝支だった。
助けてくれただけには留まらず、「手伝うよ~」と言って、さらりとカゴを持ってくれる。
桃が申し訳なさを感じて、
「手伝いなんて申し訳ないです!私の仕事ですし…」
と言えば、
「いーよ、気にしないで。おれがやりたいだけだし。」
と菅原は笑顔で返してくれる。
桃もつられて笑顔になっていた。
「では、お言葉に甘えさせていただきますね。」
(優しい人だなぁ。)
桃はゆったりとした自らの鼓動をしみじみ感じていた。
一方、菅原の心臓はドキドキと強く音を立てていた。
(笑ってくれた…)
…実のところ、菅原は桃に一目惚れしていた。
烏野と音駒の練習試合の時。
桃に心を惹かれていた。
烏野には清水という美人マネージャーもいるが、桃の魅力は彼女とは違っていた。
こういうものは理屈では説明できないが、とにかく菅原が桃に好意を持っていることは確かだった。
(一目惚れとか、笑顔が見られただけで嬉しいとか…我ながら女々しいな。)