第5章 意地悪なJoker*黒尾鉄朗√
「なんでそうなるんだよ!」
「だって。だって、私のこと嫌いだからあんな事したんですよね!嘘の告白で私を傷つけようとしたんですよね?!」
「…っ!?お前を傷つけるなんて…」
「いいんです!私を遠ざけたかったならそう言ってくれれば良かったじゃないですかっ!」
「いったん黙れ。」
「!!」
強引に唇が奪われる。
その熱に溶かされるように、頭がクラクラする。
黒尾の顔を見ると、いつもの余裕そうな顔はなかった。
艶っぽい顔にドクン ドクンと心臓が痛いくらいに脈打つ。
「好きなんだよ…お前のことが……どうしようもなく。」
耳元で囁かれた言葉に、桃の鼓動は益々加速した。
「私も好き…っ!クロが大好きっ!」
2人きりなのをいいことに、恥ずかしげもなく叫ぶと、黒尾は再び強引にキスを落とした。
「っ…クロ……!」
噛みつくようなキスに、桃は黒尾にすがりつく。
唇のピリピリとした刺激が、胸をくすぐる。
「ごめんな、気づけなくて……」
(知らぬ間に傷つけてたなんてな…。)
「俺がお前を守るから…」
(あの時の決意。
もう一度し直そう。
悲しみから、辛さから、お前を守るから。
だから側にいろよ、桃。)
桃は一度開いた目を嬉しそうに細めた。
黒尾の思いはキスの熱によって伝わったようだった。
「これってただの痴話喧嘩じゃん!」
「心配した意味がなかったな。」
「……リア充め。」
最後まで見ていた部員たちは文句を言い続けていた。
後に彼らに非難の目を向けられることを黒尾はまだ知らない。
「やっぱりね。」と呟くと孤爪はその場から離れた。
少し機嫌が良かったことには秘密である。
Fin.