第1章 夏休みの課題は終わらない
カシャッ……と缶を開ける音に夏を感じた。
外はゆらゆらと陽炎が揺らめいて一歩も外へ出たくない。いや、むしろでなくていいや!この瞬間だけは。
「ん、俺このお茶の銘柄好きなんだよなー!さっぱりしてて、こう……茶!みたいな」
「なんだそれ?よくわかんないぞスガ」
「えーーーそっかな」
笑う澤村の横でうふふと相槌を打つ私。
良かった、喜んでくれたみたいで。
もちろん偶然なんかじゃない。ちゃんと調べた…っていうか、小耳に挟んだだけだったんだけど。
こんな時が来ればいいな、って覚えてた。
まさか本当にくるだなんて思わなかったなぁ。
恋をすると、その人の笑顔が見たくなる。
だからたくさん知りたくなって、貪欲になるんだなぁ。
高校に入るまで恋なんてしたことなかった私はスガくんが初恋なんだけど、どうやら初恋というものは実らないと相場が決まっているらしい。
いや、そこは気にしてない(力尽くでも実らせるから)。
問題なのはスガくんが初恋の相手だという部分だった。