第1章 夏休みの課題は終わらない
用を足しに席を離れた澤村が出て行くのを確認すると、こそこそとスガくんにどうして澤村を加えたのか聞いてみる。
澤村を嫌いなわけじゃない。むしろ友達としては頼れるし、怖いけどヤなやつではない。
だけどやっぱり、2人きりというのは念願のビックイベントだったのだ。
恥ずかしいけど、それこそ1年の頃からの。
「俺より大地の方が何倍も頼れるし、何より三城も大地が一緒のがいいと思ったんだけど…」
「な、なんで!澤村一緒だとすっごく怒られるんだよ…ドンだよあいつ……」
シクシクと肩を落とすと優しいスガくんは大丈夫、分かってるよといって笑った。
何を理解したのかな……
全く検討つかないけどそんなことよりスガくんとの2人きりでのお勉強会がァ……
机に突っ伏すとドンの声が上から重く降ってくる。
「進んだか?……ってお前、俺が出てってから一文字も書いてないってどういうこと……?」
瞬時に素晴らしい腹筋で元に戻り、敬礼してからシャーペンを握る。
「うわわわわ、すみまっせん。今から本気でやるんで本当すみません」
「三城ホント大地苦手なのなー。少しは手加減してやれよ?」
クスクスと問題を解きながら笑うスガくんを問答無用で制す。
「こいつに手加減とか意味ないから。打っても響かないプラスチックだもんな」
「なにそれひどい!傷つきやすいグラスハートだよ!乙女の心の持ち主だから!!」
ぎゃんぎゃん喧嘩をしている間も、スガくんは私たち2人を見守っている。
もーーーー!!
どーしてこうなるの!!
今頃スガくんとほわほわムードで教わってたはずなのに……
とはいえ澤村に逆らう術を持たない私は大人しく絶対王政に従うしかないのである。
こいつ主将じゃなくてやっぱり将軍だ。
暴れん坊将軍だ。
いろんな用法を今更たんまり詰め込まれると、オーバーヒート気味になってなにも受け付けなくなってきた頃、スガくんが休憩を提案した。
天の助けと言わんばかりにそれに同意し、澤村とスガくんに自販機でお茶を買って3人で休憩することにした。
「ありがとな、三城」
「いーえ!!お礼だから気にしないで」
「茶一本じゃ払えないくらいだぞ」
「じゃあ飲むなこの減らず口め」