第1章 夏休みの課題は終わらない
ミーーーンミンミンミンミーーーンッ
「ぬおおお!うるさい!見事なコーラス!すごい耳障り!」
「まあまあ、蝉の命は一週間と言いますし」
「無駄な労力使うなら寿命を伸ばせばいいのに!」
終わらない、というか終わらす気すら起きない課題を目の前に誰もいない図書室で友達のナツキとシャーペンを握っていた。
もくもくと問題を解いていくナツキ。
煩わしすぎる蝉に戦慄する私。
高校最後の夏休み。勝負の夏休み。
私にとってもある意味勝負の夏休み。
「暇なら帰ればいいのに、ゆきってば。バレー部はまだ来ないだろうし」
「いいのー!待ってるこの時間がすきだから」
ふふんと鼻を鳴らしてテーブルに寝そべる。
なんだってこの学校は、人がいないからといって図書室のエアコン切るかな、ふつー。
窓全開にすると時々心地よい風が吹くんだな、これが。
まぶたが重くなる。眠い。
今日も来るかな。
あぁーー…、また課題進まない、な……
「三城?起きろ〜ねぼすけ!」
「ん〜……ん!え!?はい!」
「まーた寝てんの?課題終わんないぞ!」
困ったように、ニッと笑う、私の好きな人。
よかった、今日も会えた。
「毎日来てんのにそれじゃ意味ねーべ!」
「へーき平気!通うことに意味があるの」
「ったくもー」と言いつつ私の前の席に座り、自分の課題を広げるスガくん。
やった、目の前だと内心浮かれてしょうがない。
私の脳内は変態道を突っ走っているらしい。
「三城は古典やってんの?範囲大変じゃない?」
「え、範囲長いの?」
私が固まり、スガくんも固まるとそこに沈黙が生じる。
やっちゃった……
なにしに来てんだ馬鹿者とか思われた…?
流石に受験生なのにコレはないか…….