第14章 彼と私の終着点
「紫原でも誘ってみればいい」
「いや、ここは征十郎と行く」
「誘うのが恥ずかしいのか?」
「そうじゃなくて! 元は征十郎のものなんだし、私は単純に出かけたいだけだから。タダで貰っておいて別の人と行く気になれないよ」
そういえば、征十郎はわかりやすく目を逸らして「そうか」とだけ呟いた。私の手の中から一枚チケットを抜き取る。あんなに戸惑っていたのに、今は彼も少し嬉しそうに見える。
「明日のお昼の十二時に、現地集合でどうだ?」
「いいね! そうしよっか」
約束だけ取り付けると、征十郎はもう用は済んだとばかりに帰っていった。私も明日の為に、少しでも今日は宿題を終わらせておくことにした。
明日のことを考えると、心なしか宿題を進める手も早いような気がした。
お気に入りのワンピースを着て、ちょっと早くに起きて作ったお弁当を持って、現地に向かう。持ち込みありのところみたいなので、だったらと思って作ったお弁当だったけど、征十郎はなんて言うだろうか?
現地についてみれば、いつも通りの征十郎が私服姿で眼鏡をかけ、本を読んでいた。