第12章 想い思われ
「有栖っちの瞳に、どうしても映りたかった。他の誰かを見ている君を、知りたくなかったし見ていたくなかった」
心の奥がざわつく。知らない何かが、蠢いているように。彼の瞳には今、他の誰でもない私だけが映されているのだとう思うと、どきどきする。手に、汗が滲む。
「ねぇ、有栖っち。運命って信じる?」
「……運命?」
「そう、運命。俺はね、有栖っちと出会ったのは運命だって思ってるんスよ! お互いにそうなら……いいのにね」
どこか寂しそうに笑う彼だったけど、すぐにいつもの太陽のような優しい笑顔を向けて、小さく深呼吸した。同時に、私の手をしっかりと握って。
「好きです。好きなんです。俺は、有栖のことが……好き」
わかって、いたのかもしれない。思いの外驚いた顔を見せない私に、黄瀬はやっぱりそれさえも知っていたかのように私の答えをただ待った。
人を好きになるって、難しい。
友達として好きになる気持ちには、自信があるのにしっかりと明確に理解できるのに。好きって難しい。どきどきしたら好き? 一緒にいたいなって思ったら好き? 独占したくなったら好き?
ぎゅっと黄瀬の手を握り返して、じっと考えて……彼の目を見て答えた。