第6章 金魚鉢の思い出
祭囃子が聞こえる。走り回る子供達、肩を並べて歩く恋人達。出店に並ぶ家族、その誰もが思い思いにお祭りを楽しんでいる様子は、私の心さえも躍らせる。
「有栖ちん、見たいところとかある?」
「そうだなぁ……敦君の見たいところ、がいいなぁ……なんて」
「俺の見たいところか。じゃあ、こっち」
手を引かれて向かう先は、金魚すくい。
「お前達、この人混みだ。あまり勝手な行動はするなよ」
いつの間にか私達に着いてきた征十郎も、なんだかんだ出店のおじさんからぽいを受け取り、何やらぶつぶつ言いながら楽しみ始める。