第4章 屋上の一コマ
「あっぶねぇな、有栖。ちゃんと足元見ろ、馬鹿野郎」
「あ……りがとう」
青峰の腕は、逞しくて驚くほどしっかりしていて、男なんだなぁって思うと、密着して感じる彼の吐息も息遣いも何もかもが近くてぞわっと顔が熱くなった。
「はな、して……いい、よ」
「お前軽いな。ちゃんと飯食えよ」
何事もなかったかのように、私の足は地に降り立つ。身体に残った不自然な感覚に、いまいち現実味が沸かないのは気のせいか。
「有栖ちゃん、大丈夫?」
「ん? うん、平気」
「何ぼけってしてんだ、行くぞ」
「……あっ」
青峰の大きな手が、私の手を取る。本当に何でもないことのように、一歩後ろでさつきちゃんの笑う声がしたけど、お構いなしだ。
青峰ってこんなこと、平気でするんだ。そういうタイプに見えないんだけどなぁ。