第1章 ホタル ※
「きっと・・・私が好きになったのは・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「ハンジ・ゾエという人間なんです」
無鉄砲だけど思慮深く、
時には非情な選択をするけれど、誰よりも優しく傷つきやすい。
そんな貴方に、心惹かれた。
「大好きです、ハンジ分隊長」
背伸びをして、呆然と動けないでいるハンジの唇にキスをする。
そしてハヅキもシャツのボタンを外すと、肌を露わにしていった。
一糸纏わぬ姿になると、すべてを包み隠さずにハンジと向き合う。
「これが私の体です」
まだ若く、柔らかそうな肌。
ところどころに立体機動装置の痣が残っている。
「できれば、女としてではなく・・・ひとりの人間として愛してください」
それは、普通の恋愛よりも難しいかもしれない。
体で繋がることができない分、心の繋がりでそれを補わなければ。
でも・・・
「ハヅキ・・・」
ハンジはゆっくりとハヅキの頬を両手で包み、キスをした。
「お願い・・・私を許して・・・」
綺麗な瞳に涙が浮かぶ。
「ハヅキと出会うことを知っていれば・・・私はなんとしてでも男の体を持って生まれてきたのに」
するとハヅキは辺りを舞うホタルに手を伸ばした。
「分隊長ならきっと知っていますよね。ホタルの寿命は、わずか数日だということを・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
羽のようにしなやかな両腕に、無数のホタルが止まる。
「きっと私達の命もまた、長い歴史から見ればほんの一瞬に過ぎない」
「ああ・・・」
「だから、私達も思うがままに輝きましょう。命の火を燃やして、短い時間を思うままに・・・」
体など、心の器でしかないのだから。
そして私の心は貴方に愛されることを、こんなにも願っている。
「ハヅキ・・・」
ホタルが舞う。
その中で裸で抱き合う二人。
「愛している・・・」
たとえ短いものであっても、この命をかけて。
「分隊長・・・私も愛しています」
どのような運命が待ち受けていようが、
二人は今、とても幸せだった。
そしてその二人を祝福するように、ホタルがしんしんと光っていた。
第1章 『 ホタル 』 Fin.