第4章 夏祭り ※
「吉原で生きる事以上の地獄なんてありゃしません。それに・・・」
大輪の花火を背に、強くも優美な微笑みを見せる。
「お前さんと一緒にいられるなら、どんな地獄にも耐えられる」
リヴァイはその勝気な表情に、ハヅキを身請けすると告げた時のエルヴィンの言葉を思い出した。
“ 俺も妻子ある身だが、ハヅキには惚れていた。あのような女性はそういない ”
きっとそれは偽りのない気持ちだったのだろう。
ハヅキの方から懇願されれば、やはりエルヴィンも身請けに踏み切ったかもしれない。
“ ハヅキはお前に譲ろう。しかし、高尾太夫を抱いたという誇りは俺のものだ ”
派手な化粧と衣装を纏っていなくても、ハヅキは間違いなく天下一の花魁。
遠い異国の地に行っても、きっとそこで人々を魅了するだろう。
「さすが、俺が惚れた女だ」
そっと抱き寄せ、耳元で囁く。
「俺の国へ一緒に来い」
「あい、ようざんす」
ハヅキの手もリヴァイの背中に回った。
ここに初めて、吉原から異国に嫁入りした花魁が生まれた。
ドォン・・・
最後の大花火が花開く。
それは命の灯火のように輝き、愛し合う二人を照らしていた。
第4章 『 夏祭り 』 Fin.