第7章 拘束
夢を見ていた気がする。
100人の相手を無事に終えて、元の生活に戻るのだ。こんな昼か夜かもわからない場所で繰り返される、娼婦となんら変わりない扱いから解放される。
いや、もはや人としてすら扱ってもらえてないのかもしれない。自分の扱いは、幼児のオモチャのそれと何も変わらない。
抗うことはできず、相手の思うまま蹂躙される、なんて。
そこから抜け出した、という目指すべき事そのものなのに、どうしたって叶いそうにない夢。
これは、夢を、見ているんだろうか。それとも、空想の果てに生み出された幻覚?
自らの意思だけで判断できないくらいには疲れているのかもしれない。
ぼうっとした意識の中で寝返りを打とうとする。仰向けから左を向こうとしたのに、体勢はそのままに首だけがまわった。そのかわり、なにかが軋む音と右手首に鈍い痛みが走る。
え。なんなの。
一気に覚醒して起き上がろうとするが、縄で両手首をベッドボードの角に縛られていて身動きが取れない。それどころか下半身も自由を奪われている。
足首は同様にベッドの角に繋がれて、膝の間に長い棒が渡されていて、足を閉じることができないのだ。
それに加えて、着ていないのと同義としか言えないような、シースルーの下着。
もしまた誰かが入って来ても、優香が自らを守る術は一切残されていない。
「んっ…!」
縄から抜け出せないかと体勢を変えてみるが、縄がキィと軋んだ音だけが虚しく部屋に響いた。縛られた手首に食い込んで痛みを伴う。だけどやるしかない。
こうする以外の抵抗の仕方を優香は持っていなかったのだから。