過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第83章 諦めない
何故、あの休みの日ナナシを一人で行かせてしまったのか。
何故、避けるようになったナナシに冷たくしてしまったのだろうか。
何故、もっと早くしっかりベッカーの娘を振っておかなかったのか。
何故、あの夜ナナシときちんと話さなかったのか。
様々な後悔がエルヴィンに押し寄せてきて心を苛んだ。
数多くの仲間を失ってきたエルヴィンの心は、
ナナシを失った事で更に人間性を捨てていった。
全てのカードが揃った時を狙い、エルヴィンはメレンドルフ卿と
ベッカーに無実(とも言えないが)の罪を着せ、
罪の証拠となる物を議会に提出し容赦なく牢屋送りにしてやった。
家名や店も当然取り潰し。
ベッカーの娘達や親族が路頭に迷おうとも構わなかった。
出来ればエルヴィン自身の手で、奴らを八つ裂きにしてやりたかったが、
現実はそうはいかない。
エルヴィンは地位や権力に胡座をかいて好き放題していた奴らに、
公平に裁きを下してやったに過ぎない。
今回は賄賂や裏取引が行われないよう目を光らせておいた為、
終身刑の彼らが生きたまま牢屋から出るには
壁外追放の処分を受け入れるしかないので、
最期は獄死で終わるだろう。
ナナシの復讐が終わった時には、一ヶ月程の月日が経っていた。