過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第82章 涙
「ではナイル、こうしよう。この犯人は憲兵団が連行し拘束する。
尋問などには必ず調査兵が立ち合い、いかなる理由があっても
私の承諾なく釈放はしない・・・というのはどうだ?
無論自決などさせるのは論外だ。これなら憲兵団の顔も立つだろう?」
確かにエルヴィンの提案を飲むのが一番良いだろうとナイルも思うが、
エルヴィンの双眼から尋常ではない殺気を感じ取り、
返答に迷う。
殺気を漲らせている癖にまともな提案をしてくるエルヴィンに、
ナイルは何か裏があるのではないかと勘繰ってしまうのだ。
「この提案を飲めないのであれば、確保した犯人は
我々調査兵団だけで尋問するが・・・」
「ま、待て。わかった。おまえの提案を受け入れよう。
ただし、間違っても変な気を起こすな」
「・・・何の事だ?ナイル」
クスリと微笑ったはずのエルヴィンの顔がナイルにとっては
恐ろしいものに思え、身震いする。
おかしい・・・・。
エルヴィンも調査兵も皆殺気立っている。
変人でおかしいのはいつもの事だが、
それに輪をかけて様子がおかしい。
仲間が瀕死の状態だからか?
ナイルは嫌な予感を感じつつも、
エルヴィンの提案に従い犯人を憲兵団の牢屋へと繋いだ。