過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第82章 涙
憲兵団と対峙していると師団長のナイルが現場にやってきて、
怪我をしているエルヴィンと血溜まり、
拘束された犯人と思われる人物を見て言葉に詰まった。
ナイルはお人好しだが、馬鹿では無いので
一瞬で何があったか理解すると、師団長としての仕事を始めた。
「エルヴィン、何があったか報告しろ」
「突然狙撃され、私を庇った部下が瀕死の重傷を負い、
今秘密裏に病院へ運んでいる。私も無傷では済まなかったが
調査兵のお陰で犯人を確保出来た。そこに君達憲兵がやってきて
『犯人を引き渡せ』と言ってきたが、我らはそれを拒否している。
・・・以上だ」
報告書を読み上げるように言ったエルヴィンの声は
感情が削ぎ落とされたように淡々としていた。
リヴァイ達は『庇った部下が瀕死の重傷を負い、
今秘密裏に病院へ運んでいる』と言ったエルヴィンの言葉に
ナナシがまだ生きている可能性を見出す。
ナナシが死んでいたら、エルヴィンがこんな冷静でいられるはずが無いのだと、
自分を納得させるように言い聞かせながら。
エルヴィンの報告を聞いたナイルは渋い顔をしながら
「だが、ここは王都だ」と正論を述べた。
「部下が撃たれたってのには同情する。しかし、
私情を挟むな。ここは公平な場で・・・」
「賄賂や裏取引が横行している憲兵団に公平な裁きと
真相の追及が出来るのか?ナイル」
「・・・・・・・・」
エルヴィンの皮肉にナイルは押し黙るしか無い。
ナイルはやっていないが憲兵団の中で賄賂や裏取引が
横行しているのは事実だったからだ。
しかし、ここは法に則り憲兵団が主導権を握らなければ
沽券に関わってしまう。
どうエルヴィンを説得しようか考え倦ねていると、
意外な事にエルヴィンの方から提案があった。