過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第81章 凶弾
「―――あらぁ、まだ意識ある人がおるとは、思いませんでしたわぁ」
突然、頭上から独特な口調の男の声が聞こえ、
エルヴィンはハッとする。
痛んで働かない頭を何とか動かして、声の主の正体を推測する。
恐らく、ナナシの『自称家族』の・・・一度ハンジと
交戦している『ツクモ』とかいう男だ。
確か鼓膜からの振動攻撃が出来るという・・・・。
そこまでは考えられたが、耳鳴りが酷くなり
エルヴィンの意識が遠退く。
ツクモは馬車の上から飛び降り、
ナナシの様子を目視すると何の躊躇もなく、
その身体を抱き上げた。
力を無くしていくエルヴィンの手が、
ナナシの手を何とか掴んで引き留めようと藻掻く。
ここで意識を失って、ナナシをツクモに奪われる訳にはいかない―――っ!!!
エルヴィンは意識を保つ為、もう一度太腿に短剣を突き立てた。
「・・・ナナシを・・・連れて行くな。治療は・・・・此方でする・・・」
息も絶え絶えに訴えるエルヴィンに、ツクモは暗い声で言った。
「残念やけど、団長さん。ナッちゃんはもう心臓撃たれてんねん。
あんたらに託しても無駄や」
―――――心臓を撃たれているっ!!??
顔を上げると、冷たい表情で見下ろすツクモの姿があった。