過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第81章 凶弾
「あんたを庇って撃たれてもうた。
助かるには実家に帰るしか方法は無いねん」
「・・・実家・・・とやらには・・・・、医療施設が・・・?」
ハァハァと痛みで呼吸が荒くなるエルヴィンを尻目に、
ツクモは涼しい顔で言った。
「あるで。ナッちゃん専用って言ってもおかしくないのが。
そうすればナッちゃんは助かりますわ」
助かるという言葉にエルヴィンは安堵したが、
次に言われた言葉に目を見開いた。
「でも、もうあんたらとナッちゃんは会えへんよ。
ナッちゃんはもう調査兵団に居たない言うてるんや。
心臓撃たれて死んだと思って、ナッちゃんの事は諦めてください、団長さん」
ほな、さいなら、とツクモが踵を返すと、
力の入らないエルヴィンの手は易易とナナシの手を離してしまった。
エルヴィンは最後の力を振り絞って立とうとするが、
足にも力が入らず朦朧とする意識の中で「動け!動け!」と
必死に藻掻く。
――――行ってしまう・・・っ!!
擦れ違ったまま、もう二度と会えないなんて御免だっ!!
頼むからナナシを俺から奪わないでくれっ!!
ナナシは俺が愛した唯一の・・・・―――っ!
遠ざかるツクモとナナシの姿を脳裏に焼き付けながら、
エルヴィンは意識を手放す事になった。