過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第81章 凶弾
ナナシが意識を手放すように目を閉じたので、
エルヴィンはハンジに今からでも服を脱がせて
治療するように指示を出そうと顔を上げた。
しかし、ハンジは頭を抑えながらフラフラと地面に倒れ込み、
エルヴィンは漸く周囲の状況に気付く。
エルヴィンが目視出来る範囲の人間全てが倒れていて、
意識のある者は誰一人いなかった。
一体、どういう事だっ!?
何が起こっているっ!?
そう思った瞬間、エルヴィンの頭に激痛が走った。
意識を手放しか兼ねない程の痛みに、必死に耐えるが、
エルヴィンもハンジ達のように意識を失うのは
時間の問題のように感じた。
恐らく意識を手放した方が楽なのだろう。
しかし、目の前で血だらけになって横たわるナナシを見ると、
意識を手放してなるものかという気持ちが湧き起こるのだ。
直感で、ここで意識を失ったらもうナナシに会えなくなると
感じたからかもしれない。
エルヴィンはナナシから貰ったマインゴーシュを抜き、
自らの足に突き刺して痛みで自我を保つ。
そして、握ったナナシの手を離さないように、
更に強く握った。