過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第81章 凶弾
少し前から違和感を覚えていたナナシは周囲の気配を探っていた。
周囲の様子は昨日と何ら変わりないように見えるが、
漂う空気に僅かながら殺気のようなものを感じ取ったのだ。
エルヴィンが使う馬車の前で、必死にその殺気の元を辿るが、
人が多すぎて集中し辛い。
万が一を考えリヴァイやミケ・・・エルヴィンに
注意喚起をしておくべきか、・・・そう思った時、
撃鉄を起こす音が耳に入りそちらへ目を向けると、
此方の方に銃口を向ける男の存在を視認した。
だが、銃口はナナシを狙っているのではなく・・・
「ナナシ・・・」
自分の後ろにいたエルヴィンに向けられたものだと気づいた瞬間、
体が反射的に動いた。
犯人の位置と弾道を瞬時に予測しエルヴィンの身体を押したが、
弾丸がエルヴィンの命を奪える箇所に撃ち込まれてしまうと
観察眼でわかってしまったナナシは、
己の身体を盾にするしかなく、胸部と腹部に銃弾を浴び
地面に倒れ込んだ。