過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第81章 凶弾
・・・翌日。
天気は快晴だというのに、進展のない陰鬱な会議にうんざりしながら、
エルヴィンは馬車に乗る時ナナシに部屋へ来るように
言おうとシミュレーションを行っていた。
朝言おうとしたのだが上手く逃げられ、
同じ馬車の中では女性補佐官が絡んできてそれどころではなく、
会議前に話し掛けようとすれば、スッと避けられてしまって
悉く機会を失っていたのだ。
馬車に乗る時も話すタイミングを与えないようにすると思うので、
彼の腕を掴んで拘束する必要があるだろう。
リヴァイ達にも協力要請はしてあるので、
多分逃げられる事はない・・・・はず。
会議が終わり各兵団の幹部が馬車に乗って帰路に着く中、
エルヴィンは馬車の前で立っているナナシを発見し近づく。
ここで逃げられたら・・・と思うと心が急いたが、
同じ馬車に乗るので逃げられはしないだろう。
「ナナシ・・・」
エルヴィンがそう声を掛けたと同時にナナシが振り向き、
「エルヴィンっ!!!」
という叫び声と共に何かから庇うように、
その小さい身体でエルヴィンの身体を力強く押した。
―――直後、パンッ!パンッ!パンッ!という乾いた発砲音が
周囲に響き渡り、悲鳴が上がった。