過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第80章 すれ違い
「お・か・え・り!エルヴィン」
宿屋に着くとかなり機嫌の悪そうなハンジが
仁王立ちで待ち構えていたので、エルヴィンは首を傾げた。
見ればリヴァイ、ミケ、ナナバもエルヴィンを責めるように
睨んでいる。
「ただいま。どうしたんだ?こんな所で・・・・」
「・・・っ!?どうしたもこうしたも、何で・・・っ!!」
「それより聞いてくれ!先程、巨額の寄付の申し出があったんだ!」
ハンジの言葉を遮り、エルヴィンは興奮気味に
念書を皆の前に広げて見せた。
ハンジ達もその桁違いの金額に驚愕し、固まる。
「事情はよくわからないが、とある女性が遺産の分配を拒否して
調査兵団に寄付するように言ってくれたらしい。
信じられるか!?この金額を受け取らなかったんだぞ!
この金額が手に入れば残りの人生を遊んで暮らせるようなものなのに!
私はこの世の中、まだまだ捨てたものではないと改めて実感したよ!」
興奮するエルヴィンとは裏腹に、ハンジ達の心は冷えていった。
エルヴィンの喜び具合が尋常でないのは
普段から苦労しているからだと理解できる。
万年貧乏なので資金調達ややりくりに苦労しているのは、
傍で見ていてよくわかっていたからだ。
ハンジ達も多額の寄付に喜ばなかったわけではない。
怪我をして一人で帰ってきたナナシを思うと、
それを素直に喜べる心境にはなれなかったのだ。