過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第80章 すれ違い
「エルヴィン様!私は貴方をお慕い申し上げております!
何故私ではいけないのですか?私はあの方より貴方を愛しています!
調査兵団への資金援助も父が惜しみなくすると言ってくれました。
エルヴィン様が壁外調査から戻った時も、
傷ついた貴方を癒して差し上げる自信もあります。
どうか、あの方と別れて私をお選びになって下さい」
気弱そうな少女が泣きながら訴える様は、
同情を誘い健気に見えるが、エルヴィンの心は全く動かなかった。
彼女の好きそうな王子様のように跪き手を取ると、
エルヴィンは真剣な表情でハッキリ言った。
「大変申し訳ないが、私は君を愛してはいない。
私が愛しているのはナナリーただ一人だ。
例え彼女が君より私を愛してくれていなかったとしても、
私が彼女をこの世の誰よりも愛しているからそれで良いんだ。
彼女が私の傍にいるだけで私はとても幸せになれる。
それに彼女はとても強い女性だ。私は君のように弱い女性に
興味は無いのでね・・・。私の事は諦めてくれ」
敬語をやめ威圧的に言うと、カレンは顔面蒼白にさせながら
絶句していた。
恐らく彼女の中のエルヴィン像が砕けたのだろう。
スッとカレンの手を離し立ち上がると、
エルヴィンは「そうそう・・・」と付け足した。
「ナナリーに暴言を吐いた事について謝罪して貰いたい所ですが、
また夫人に暴れられると困るので結構です。
それでは失礼致します、カレン嬢」