過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第79章 女の戦い
「あなた、急いでお医者様を手配なさって。
あと、男手集めてあの女を早く止めて頂戴。
あなたのコレクションがどんどん割られていってるわよ」
主は青い顔をしながら使用人を集め奥の間へ派遣し、
エルヴィンもそれに同行すると、
奥の間は床が陶器やガラスが割れたもので溢れ返っていた。
室内にいるのは、取り押さえられながらもまだ興奮して
暴れているメレンドルフ夫人と、カタカタと震えている妹のカレン、
・・・そして額から血を流しているナナシだけだった。
どうやら他のご婦人方は上手く逃げたらしい。
エルヴィンは無言でナナシに歩み寄り、
額を抑えているナナシの手を退け怪我の具合を診る。
どうやら薄皮一枚切っただけで済んだらしく、
血ももう止まっているようだった。
大した怪我じゃなくて良かったと思う反面、
様々な怒りが湧いてくる。
「問題を起こさないようにと言っておいたはずだが・・・?」
感情を押し殺した声でエルヴィンが言えば、
ナナシはビクリと身体を揺らし申し訳無さそうに目を伏せた。
背後で自分達に何かを喚いているメレンドルフ夫人がいるので、
このままここにナナシを置いておくのは得策ではないだろう。