過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第79章 女の戦い
別室に待機させても良かったが、
ナナシの色香にアテられた愚かな男が言い寄ってこないとも
限らないので、屋敷の主に言葉を掛けナナシだけ先に帰して
貰うように手配する。
医者に診せてからでも・・・と賛同者達に言われたが、
血は止まっているし、ハンジ達に診せた方が
余計な虫はつかないだろうし信頼もしているので
やんわり断って、ナナシを馬車に乗せた。
「君のハンカチはもう血で汚れているだろう?
私のハンカチで傷を抑えなさい。宿屋に戻ったら
ハンジかモブリットに手当してもらうといい。
私はこのまま残って後始末をして帰るから、帰りは遅くなる」
ナナシは何か言いたそうにしていたが、
結局俯いて口を噤んでしまって声すら聞けなかった。
それを横目で見ながら、エルヴィンは
「そこまでして自分と話したくないか・・・」と
悲しい気持ちになったが、心を鬼にして馬車を出発させる。
馬車が門を潜り見えなくなるまで見送ってから、
エルヴィンは屋敷ヘと戻った。