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過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】

第79章 女の戦い










婦人達はピタッと会話を止め、
声の主が誰であるかを確認すると扇で顔を隠しながら
目を逸らす。

そんな彼女達を鼻で嗤うように、堂々とお茶会の部屋に入ってきたのは
噂のメレンドルフ夫人とその妹カレンだった。

妹は姉の影に隠れるようにしてオドオドしていたが、
姉であるメレンドルフ夫人はナナシの傍まで来ると
見下したような視線を向け言い放った。


「貴女、どこの馬の骨かもわからない卑しい身分らしいじゃない。
そんな女がどんな手でエルヴィン・スミスを誑かしているのか
是非教えて頂きたいわ。出会いはどこだったかしら?
聞いた話では道端というお話だったけれど、
道端は道端でも路地だったらしいじゃない?
普通なら路地でなど会わないわよね?貴女は路地で
何をしていたのかしら?」


ニッコリと嗤うメレンドルフ夫人の言葉には明らかな悪意が込められていた。

ナナシの身分は秘密という事になっているので、
没落貴族の女、庶民の娘、裕福な商人の家系
・・・または娼婦等など様々な憶測が飛び交っていた。

貴族というのは卑しい身分の者には冷たいので、
メレンドルフ夫人はナナシを『最下層の娼婦』と、
この場で位置づけたいらしい。

そうすれば、ここにいる調査兵団の賛同者の婦人達から白い目で見られ、
擁護が受けられなくなるだろうという考えだった。


案の定、賛同者の婦人達がコソコソと何かを囀り出したが、
ナナシは気にせず平然とお茶を嗜む。


肯定も否定も動揺もしないナナシに
苛立ちを募らせたメレンドルフ夫人は怒りの表情を見せ、
ナナシが持っていたカップを扇で弾いた。

カップは無残に床で砕け散り、その場は静まり返る。


「何とか言ってみなさいよ。それとも卑しい身分だから、
ここで出される高級なお茶が飲みたくて仕方無かったのかしら?
エルヴィン・スミスはお茶も買ってくれないの?」






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