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過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】

第78章 王都出張








「何故そんな事を聞く?」

「え・・・いや・・・ちょっと気になったから・・・」


目を泳がせながら歯切れ悪く言ったナイルを一瞥すると、
エルヴィンは興味無さげに書類に目を落としたので
ナイルはその隙に「じゃあな」と言って逃げを打つ。



ナイルが去った後、表面上何事もなかったかのように装ったが、
エルヴィンの内面は揺れに揺れた。


この一週間、ナナシを思わなかった日は一度たりとも無い。

彼が自分を避けている時も、
自分に無断でどこかに出かけてしまっても、
その身を案じ気にかけていた。

三日前もナナシがそこまで自分達を仲間ではないと言い張るなら、
と思って敢えて冷たく対応したが、
傷ついた表情をしたナナシを思い出すと心が締め付けられる。


あれを見た瞬間、ナナシが一体何を考えているのか
本当にわからなくなった。

自分たちと距離を置くことを望んでいるはずなのに、
何故そんな顔をするのだ、と。

距離を置くことが彼の意志でないのとするなら、
それを打開するために何が彼をそうさせているのか知る必要がある。


取り敢えず暫く様子見をしようと決めたものの、
傍にいるのにナナシと口をきけないのは思った以上に苦痛だった。



エルヴィンは他の人に気付かれないようにそっと溜息を吐き、
ちらりとナナシを盗み見た。

憂いを帯びた表情で佇むナナシの姿に、また溜息が漏れる。

顔色が良くないようだが、ちゃんと食べて休んでいるのだろうか?


「団長、そろそろ会議が始まるようです」

「そうだな」


隣にいた補佐官がそう声を掛けてきたので、
エルヴィンは気持ちを切り替えて会議に集中した。






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