過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第78章 王都出張
ハンジとエルヴィンの会話が自然と耳に入り、
どういう事だろうとナナシが思っていると、
例の補佐官がこれ見よがしに声を張り周囲に聞こえるように言った。
「先日の懇親会の影響も出ているのではないかと思われます。
団長が怪我人に付きっきりだったのが、ベッカー氏の不興を
買ってしまったのでしょう」
その怪我人というのは、恐らくナナシの事だろう。
ベッカーの娘は事件後もエルヴィンと会いたがっていたが、
エルヴィンはそれに見向きもせずナナシに付き添っていたのだ。
補佐官の言う事は的を射ているが、やや棘のある言い方だった。
ナナシは、やはりあの時出しゃばり過ぎてしまったな・・・と
心の中で反省しながら、意識的にエルヴィンが
視界に入らないようにする。
きっとエルヴィンは今とても苦い顔をしているだろう。
あまりそういう顔は見たくない。
ナナシはモブリットが色々荷物を運んでいるのを見て、
逃げるようにして彼の元へ行き荷物運びを手伝うことにした。