過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第76章 お主の事が大嫌い
ナナシは何だかんだでエルヴィンに甘くて、
調査兵団内の他の誰よりも心を許しているように見えていた。
それが突然『大嫌い』だなんて不自然にも程がある。
人間というのは隠していても存外雄弁で、
前々から嫌っていたのならどこかにそのサインがあったはずなのだ。
それなのに、最近のナナシからはエルヴィンに対して
そんな感情が向けた形跡が無かった上、
彼に慈しむような眼差しを向けていたのを知っている。
いつの間にか始まった三時のお茶会も、
ナナシがエルヴィンの体調を気遣って始まったもので、
彼が嫌いだというのならお茶会などそもそもやらない。
ナナシが何を隠しているのかはわからないが、
今日一人で出掛けたことと無関係ではないだろう。
誰かと会って、何かを知り、エルヴィンを拒絶するようになった・・・。
そう考えた方が自分達にとっては筋が通ってしまう。
「今日は誰かと会っていたの?その人に何か言われちゃった・・・?
エルヴィンには言わないでおくから、私達には教えて欲しいんだ。
そうじゃないとナナシのフォローも出来ないから・・・」
ナナバが努めて冷静に、優しく諭すようにナナシに語り掛けると、
彼は首を横に振って拒絶を示した。
「フォローはいらない。ただ、これからは放っておいて貰いたいだけだ」
「放っておくって・・・・」
「仕事以外で私に構わないでくれ。・・・それだけだ」