過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第76章 お主の事が大嫌い
隣室に通されたナナシはベッドに座り、
正面にはハンジが椅子の背凭れに顎を乗せるように座り、
ナナバは普通に立つという位置で落ち着いた。
「・・・エルヴィンを振ったって本当なの?」
ナナバが優しい声色で問い掛けてきたので、
ナナシは素直に首肯する。
ハンジは困ったように眉をハの字にさせナナバを仰ぎ見てから、
視線をナナシに戻し「どうして?」と首を傾げた。
「もうセクハラにはうんざりしていたし、監視されるような
毎日も嫌だった。何より異常なあやつの行動が我慢ならなかった」
「不平不満が常日頃からあったのは、よくわかった。・・・
でも、どうして今日それが爆発したの?街で何かあったの?」
ナナバが慎重に話し掛けると、ナナシは伏し目がちに淡々と語った。
「別に何もない。ただ、普通の人間の生活を見ていたら、
異常な行動ばかり取るエルヴィンに嫌悪感が湧いただけだ」
「・・・・・・成程」
ハンジとナナバはお互いに目を合わせた。
ナナシの言っている理由は尤もで、一応筋は通っている。
エルヴィンの行動はドン引きするくらい酷いものだし、
セクハラは日常茶飯事、我慢の限界がいつ来ても
おかしくなかったというのが現状だった。
だが、女の勘でこれは何かを隠すために用意された言い訳だと感じた。