過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第76章 お主の事が大嫌い
「・・・やはり、君を一人で行かせるべきではなかったようだ。今度からは・・・」
「いや、今日一人で行ったからこそ、意味があったのだ」
「意味?・・・意味とは何だ?」
ナナシは手に持っていたカップをテーブルに置くと、
伏し目がちに話し始めた。
「一人になって、私は様々なことを振り返れた。
手遅れになる前に気づけて良かったと思える事も多かった。
私は・・・今まで知りたくないものから目を背けていたのかもしれない。
だから、お主にはっきり言うよ」
伏せていた目を上げ、エルヴィンの目を真っ直ぐ見て言い切った。
「私はエルヴィン・スミス、・・・お主の事が大嫌いだよ。
こうして近くにいる事も不愉快なんだ。契約は守ってやるが、
仕事以外では不必要に私に近づくな。触るな。関わるな」
一瞬、唐突に言われた言葉が理解できず、
エルヴィンは大きく目を見開いてナナシを凝視した。
ナナシの目は迷う素振りもなくエルヴィンを見つめ、
それが冗談でないという事は感じ取ったが、
エルヴィンとしては到底納得できる話ではない。