過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第76章 お主の事が大嫌い
浴室に着替えを置いて暫く経った後、
ナナシが浴室から出て来たのでエルヴィンは淹れたてのお茶を
彼に渡した。
いくら湯に浸かったといえ、
体の芯は冷え切ってしまっているだろうという心遣いからだ。
「・・・あぁ、すまない。時間には間に合っただろうか?」
お風呂に入ってナナシも少し正気に戻ったらしく、
門限の心配を口にしてきたのでエルヴィンは苦笑を浮かべた。
今心配すべきは君の方だろうに・・・。
ナナシをソファに座らせ、ゆっくりお茶を飲ませながら
エルヴィンはどう話を切り出そうか考える。
今は大人しくお茶を飲んでいるが、
先程のナナシは明らかに異常だった。
何か事件に巻き込まれたか、
誰かに何かを吹き込まれたのかしたに違いない。
意を決してエルヴィンが何があったか尋ねようとした瞬間、ナナシの方が先に口を開いた。
「エルヴィン・・・・お主の親はどのような人物だった?」
「・・・?何故突然そのような事を聞くんだ?」
「何となくだ・・・。私には親というものが存在しないのでな・・・」
ナナシの問いが、今日何かあったことと関係あるのだろうか?
とエルヴィンは考えたが、今の彼からは何も読み取れない。
ナナシの表情に気をつけながら、
自分の話でナナシの気が紛れるならと
エルヴィンは自分の父親の事を話し始めた。