過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第76章 お主の事が大嫌い
「どうしたんだ、ナナシ。何かあったのか?」
「・・・・・・・・・」
とても虚ろで、何の感情も込められていない瞳は
まるでガラス玉のようで、エルヴィンは一瞬息を呑んだが、
「こんなに冷えて、風邪を引いてしまうぞ!?さぁ、中に入りなさい」
ナナシの身体が冷え切っている事に気づくと、
強引に兵舎内へと招き入れた。
尋常ではないナナシの様子に「一人にしてはいけない」と
判断したエルヴィンは一先ず自分の部屋へとナナシを通した。
ナナシの為に湯を張り、タオルで彼の身体を拭くが、
服がビショビショなのでタオルが重くなるばかりだ。
「・・・ナナシ、向こうを向いているから
服を脱いで身体を拭きなさい。私がやっても良いんだが・・・
君は嫌だろう?もうすぐお風呂が沸くから入っておいで」
ナナシは無言でタオルを受け取り、浴室に消えていった。