過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第74章 過去へ続く道
「お主のご両親は今日の件について何か言っていないのか?」
「両親と祖父はあまり仲が良くなくて・・・別の所で暮らしています。
両親は『迅鬼狼』について何も知りません。
知っているのはおじいちゃん子の僕だけです」
にっこり笑うアルフレッドには申し訳ないが、
場合によっては彼も殺さなくてはならなくなるかもしれない。
コンラッドには改造手術をしていないし、
その選択を迫ってもいなかったが『迅鬼狼』という存在は
それを知っているだけでも罪になり得る上、
今では無かった事にした方が良いものなのだ。
アルフレッドに伴われ向かったのはとても奥にある部屋で、
一歩一歩近づくにつれ懐かしい気配が漂ってくるのを感じた。
この先にコンラッドがいると思うと、緊張が走る。
「祖父はもう歩くことも出来ません。
食事もあまり取れなくなっています。
多分今日が貴女と会える最期だと言っていました」
「・・・・・そうか」
淡々と語るアルフレッドにそれしか返せない。
ナナシは恐いのだ。
コンラッドから聞かされるものが、
とても残酷なものだとわかっているから・・・。
不安で不安で・・・自然と歩調も遅くなっていく。
こういう時、隣に誰かがいてくれたら・・・と思ってしまう。