過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第74章 過去へ続く道
―――――ナナシ
不意にエルヴィンに呼ばれた気がして振り返る。
目の前には広くて薄暗い廊下しかなくて、
振り返ってもエルヴィンがいるはずないのに、
何故彼の姿と声を思い描いてしまったのだろうか?
「どうかしましたか?」
「・・・いや・・・何でもない」
またアルフレッドに合わせて歩き出したが、
ナナシの心はローゼにいるエルヴィンを思っていた。
・・・・早く・・・・帰りたいな・・・・。
無性にエルヴィンに会いたくなって、そんな事を考える。
変態で腹黒くて油断ならない男だけれど、
自分を想ってくれているのは本物だ。
エルヴィンに早く「おかえり」と言って欲しい。
優しい声色でも、怒った声色でも、何でも構わない。
ナナシはそんな想いを抱きながら、
目の前にある扉が開かれるのを静かに見据えた。